2008年11月13日木曜日

『アイデンティティ/他者性』

例のごとく,衝動買いしてしまったアイデンティティ/他者性 (思考のフロンティア),おおまか読了.

この本,タイトルと内容が一致していない.否,すくなくとも「タイトルから一般に期待されるモノ」ではない.この本で取り扱われているのは,(そのタイトルにもかかわらず)いわゆる「自我アイデンティティ」の話ではない,と言っていいと思う.分析の対象となっている人物というのが特別な,悲惨な経験をくぐり抜けてきた人びとであるという意味ですぐれて特殊ケースであるし,そうした人びとのアイデンティティ,というよりはむしろ彼らの個人史と彼らの著述のスタイルの問題を扱っているという点でより総合的な分析である.

それはそれとして,また分析のあまりにも文学的(?)なところに辟易させられた.著者の深い(?)分析(?)について行けない.もちろん著者としては「当然のこと」を説明しているつもりなのかもしれないが….こういう文章を読める人というのは,たぶん,相応の文化資本の相続人なのではないかと思う.そういう意味で「他者性」というものを感じる一冊であった.
(※注: ぼくがそのような感じを受ける文書もしくは文書以外のものというのはおびただしく存在するので,別にこれはこの著書の特別であることを指摘しているのではない.)

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